2024年2月現在、新築住宅が「売れていない」という噂を聞いたことはありませんか?
そうです、確かに売れていません。
東京都心のマンションだけは億越え物件でも爆売れですが、戸建て業者は販売に苦しんでいます。
建売住宅(分譲住宅)はもう壊滅的、注文住宅は建売住宅ほどではありませんがかなりの不況です。
筆者があちこちの住宅メーカー(注文住宅系)にインタビューしてみると、このような状況であることが分かります。
- 見学会などイベントをしても来場が極端に少ない
- ホームページから資料請求はあるが商談にはならない
- 見積もりを出すと「高いからやめる」と言われる
- Instagramなどはよく見られている
つまり、興味はあるが家を買うには至らない、という状況です。
その原因はなにが考えられるでしょうか。
建物と土地が高すぎる
もうこれに尽きると思います。
コロナ禍の物価高で建材が高騰していることに加え、最近は国が求める省エネ基準が厳しくなっていること、太陽光発電や床暖房など高額な設備が増えていること、消費税がアップしたことなどによって住宅価格は上昇を続けています。
戸建て住宅はマンションほど高騰していないのですが、それでも筆者の実感として20%ほど高くなっています。10年前に3,000万円だった建物が3,600万円になっているという感じです。
同時に、住宅地も高くなっています。安いのは明らかに問題のある物件や、バスも電車も通っていないような僻地ばかり。
地方都市では、ローコスト住宅であっても4,000万円前後の資金計画はざらにあります。高性能でお洒落な家であれば、5,000万円以上は覚悟しなければなりません。
かと言って、ローコスト住宅や安い建売は欲しくない
中には今でも建物価格が「698万円!」などと宣伝している超ローコスト住宅もあります。しかし断熱性能等級が低かったり、そもそも住宅ローン減税が使える省エネ基準に達していないケースもあります。控えめに言っても、そんな建物が30年持つとは思えません。定年退職と同時に解体することになるでしょう。
<参考記事>
正直なところそれは低所得者向けであって、平均的な所得の世帯にとっては「安物買いの銭失い」になりかねません。金融リテラシー(金融知識)が高い人は絶対に選ばないのです。
住宅に限らず、昔の値段でやってます的な商品の多くは低クオリティであるのは言うまでもないでしょう。
「値段が上がったからと言って、欲しくもない家は絶対いや」となるに決まっています。
「家はいずれ買うかもしれないけれど、今買うのは得策ではないな、待ってみるか」という判断をするのが一般的だと思います。
フラット35の金利が上昇している
さらにまずいことに、フラット35(全期間固定金利型住宅ローン)の金利まで上昇しています。
これは簡単に言うと、日本銀行の政策が見直され、長期金利が上がったことによるものです。
さらに、2024年3月に日本銀行がマイナス金利の解除を発表しました。しばらくは緩和的な環境は続くとされているものの、いずれは変動金利が上昇を始めます。
ただでさえ高い住宅価格なのに、利息まで高くなる局面が現在です。消費者のマインドが冷え込んでいるのは当然と言えます。
中間層~富裕層のライフスタイルが変わりつつある
昭和から平成にかけて、富裕層は「郊外の高級住宅地にお屋敷を構える」ものでした。
高齢になって売ろうにも土地も建物も大きすぎて二束三文の値段しかつきません。解体しようにも数百万円かかります。
土地神話があった時代では立派なお屋敷は資産だったかもしれませんが、今は負債とも言えます。
近年の富裕層は「都心のタワーマンション」を選ぶことが多くなりました。売却時も有利で、セキュリティ上も安心だからです。
パワーカップルと呼ばれるような若く高い年収を誇る夫婦もまた、戸建てを選ばない傾向が強くなっています。職場に近いなど利便性を優先していることに加え、なによりタワマンは資産性が高いため人生の節目で売却してライフスタイルを変えることも可能です。
パワーカップルや富裕層の「戸建てを選択しないライフスタイル」を横目で見て影響を受ける中間層もまた、戸建て住宅を避ける傾向があり、それは今後も続くものと想像されています。
このような事情から、いま、家が売れていません。
消費者として今の状況をどう捉えるべきでしょうか。
家を買うべきでしょうか。待つべきでしょうか。賃貸を選択すべきでしょうか。それとも違うスキームはあるのでしょうか。
おそらく自分だけの判断では難しいでしょう。住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談しながら、将来のシミュレーションを作り話し合ってみることをお勧めします。